February 19, 2012

断腸亭日乗 昭和18(1943)年 2月19日より

(下巻 P188)
陰。薄暮綾瀬川堀切辺散策。
  噂のききがき
荏原区馬込あたりにては良家の妻女年廿才より四十歳までのものを駆り出し落下傘米軍襲撃を防禦する訓練をなしたる由。その方法は女らめいめいに竹槍をつくりこれを携へ米兵落下傘にて地上に降立つ時、竹槍にて米兵の眉間を付く計畧なりといふ。軍部より竹槍の教師来り三日間朝十時より午後三時まで休まず稽古をなしたりといふ。怪我せし女もありし由なり。良家の妻女に槍でつく稽古をさせるとは滑稽至極。何やら猥褻なる小咄を聞くやうなり。

昔から日本のお母さんたちは 放射能同様 まだ見ぬ敵に備えなければならなかったのですね。
中島知子さんや原子力安全神話を引き合いに出すまでもなく 我々日本人は洗脳されやすい民族のようです。
面従腹背で生き延びる術を知り尽くしている中国人民との違いに心が痛みます。
もっとも 約10年を経た50年代には米国が憧れの国になるのですから 日本人も逞しいかも。

そんな感慨に浸りつつ「'50s Pops Best Selection」をこんなCD聞いていますちょっと照れてしまうCDですに追加しました。

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'50s Pops Best Selection / Perry Como etc.(BVCP-8748)
Papa Loves MamboにUska DaraにMambo No.5にMoonlight SwimにPut Your Head On My Shoulderなどなど。
50年代もののCompilation Albumにはどうしても凡庸・浅薄で聴き飽きたRock'n Roll曲が紛れ込んでしまうのですが このAlbumは粒ぞろいです。

1. 小さな靴屋さん(エームス・ブラザーズ)
2. パパはマンボがお好き(ペリー・コモ)
3. チャ・チャ・チャは素晴らしい(エンリケ・ホリン楽団)
4. ウシュカ・ダラ(アーサ・キット)
5. ショー・ジョー・ジ(アーサ・キット)
6. マンボNo.5(ペレス・プラード楽団)
7. セレソ・ローサ(ペレス・プラード楽団)
8. ユー・ユー・ユー(エームス・ブラザーズ)
9. オー・マイ・パパ(エディ・フィッシャー)
10. 誇り高き男(スリー・サンズ)
11. さらばジャマイカ(ハリー・ベラフォンテ)
12. バナナ・ボート(ハリー・ベラフォンテ)
13. カナダの夕陽(ユーゴー・ウィンターハルター楽団)
14. ホット・ディギディ(ペリー・コモ)
15. メロディ・ダムール(エームス・ブラザーズ)
16. 月影のなぎさ(アンソニー・パーキンス)
17. パトリシア(ペレス・プラード楽団)
18. オー・ロンサム・ミー(ドン・ギブソン)
19. ダイアナ(ポール・アンカ)
20. 恋の日記(ニール・セダカ)
21. おお!キャロル(ニール・セダカ)
22. 恋の片道切符(ニール・セダカ)
23. ロンリー・ボーイ(ポール・アンカ)
24. あなたの肩にほほうめて(ポール・アンカ)
25. ワンダ・オブ・ユー(レイ・ピーターソン)
26. 谷間に三つの鐘が鳴る(ブラウンズ)

終戦から10年経っていない1954年の「Papa Loves Mambo / Perry Como」

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December 31, 2011

荷風散人の大晦日(断腸亭日乗より)

大正14(1925)年
日暮里病院の帰途桜川町の女を訪ふ。
淫蕩懶惰の日を送りて遂に年を越しぬ。

昭和2(1927)年
初更お歌来る。
除夜の鐘鳴りやみし時、お歌の帰るを送りて門外に出でて見るに、上弦の月は既に没し淡烟蒼茫として四鄰の樹木を籠めたり。

昭和3(1928)年
女好きなれど処女を犯したることなくまた道ならぬ恋をなしたる事なし。
昭和5(1930)年
郵船会社の株は無配当となり、東京電燈会社の如きも一株金壱円の配当なり。されど予が健康今年は例になく好き方にて夏の夜を神楽阪の妓家に飲みあかしたることもしばしばなりき。五十二歳の老年に及びて情癡なほ青年の如し。
昭和8(1933)年
余今日までいろいろの女と交際したれど、この度の如く何の関係もなき唯の知合ひの女より突然金の無心を言はれし事なし。
昭和12(1937)年
芝口の金兵衛に至りいち子と共に茶漬飯を喫す。いち子余が家に来り小憩して後麻布十番なる姉の家に行くとて待たせ置きたる円タクに乗りて去れり。
昭和15(1940)年
宿屋に泊り下女に戯れて恥をかかさるるも何のとがむる所かあらむ。人間年老れば誰しも品行はよくなるものなり。
昭和16(1941)年
寝に就かむとする時机上の時計を見るに十二時五分を過ぎたるばかりなれど除夜の鐘の鳴るをきかず。これまた戦乱のためなるか。恐るべし恐るべし。
昭和18(1943)年
今は勝敗を問はず唯一日も早く戦争の終了をまつのみなり。
かくして日本の国家は滅亡するなるべし。

昭和23(1948)年
夕餉を終りし時停電となる。昨夜春街氏の携来りし石油ランプにて辛じてこの日の事をしるす。
かくして戦後の第四年は過ぎ去りぬ。

かくして 若い頃の荷風散人に負けず劣らず女性関係の派手なミカエル・ブルムクヴィストが活躍する「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 / スティーグ・ラーソン」を海外推理小説に追加しました。

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ミレニアム 3 眠れる女と狂卓の騎士 / スティーグ・ラーソン
(早川書房 2011)
主人公: ミカエル・ブルムクヴィスト(ミレニアムの発行責任者・共同経営者・記者)

リスベットはザラや金髪の巨人との死闘で重傷を負い入院。 公安警察特別分析班は過去の策謀が白日の下に曝されるのを恐れ リスベットの口封じなどを画策。 そしてミカエルは その実態の本格的調査を開始。 特別分析班の危機管理は オリンパス㈱の菊川・森・山田組や大王製紙㈱の井川家を想起させるものが。 光源氏や若き日の荷風散人のように華やかなミカエルの女性遍歴は相変わらず。 新たに女性が登場する度「ミカエルの毒牙にかかってしまうでは」などと物語の展開以上にハラハラ。 結局一名がミカエルの手中に...

お正月にゆっくり読むつもりだった「ミレニアム」三部作は読了。どうしましょう...
講談社青い鳥文庫の「源氏物語」と「平家物語」でも読みましょうか。

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October 25, 2011

断腸亭日乗(下) 昭和20(1945)年10月25日より

(下巻 P288)
十月廿五日。快晴。鳥声欣々たり。午後うさぎ屋谷口氏伊東に赴く途中なりとて来り話す。砂糖野菜煙草等を贈らる。清潭子手紙にて余が旧作『すみだ川』を活動写真に仕組むべき計画松竹映画会社 にて希望の由申来れり。就寝後腹痛下痢二回。
街談録
 一 浅草公園六区興行町にて米国の兵卒同士にて黒人と白人との喧嘩あり。白人の兵一名ピストルにて殺されしといふ。
 一 今廿五日夕方熱海停車場にて米兵チョコレートを日本人に売りゐたるを見し人の話に、その価、参拾円より七拾円位なり。 米兵この金を持ちて郵便局付近の素人屋に行き女を買ふ。この地にて 蟇屋といふものなり。戦争中一晩三拾円位なりしが今は短時間百円が相場なる由。
 一 東京吉原遊郭には焼残りのコンクリート建築を修繕したる女郎屋十軒ほどあり。黒人の米国兵卒を歓迎し毎夜繁昌する由なり。


3月10日の空襲から約7ヶ月半。
終戦から2ヶ月ちょっと。

そしてうさぎ屋谷口氏は どらやきの「うさぎや」のご主人かと。
砂糖が手に入ったのは「うさぎ屋」さんだからこそということかも。
その一方で 熱海も吉原も実に逞しいです。
浅草も賑わっているようです。
ということで 福島県などの風俗情報が妙に気になる今日この頃です。

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東京 おいしいもの文学散歩
婦人画報社
(P92)

中村汀女が詠んだ四季の銘菓


うさぎや ― どらやき
さすがなる味なり
折よくもとて迎ふれば鵙の声

つぶあん。

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April 15, 2011

断腸亭日乗 昭和20(1945)年 東京大空襲 

(下巻 P252より)
三月九日。 天気快晴。夜半空襲あり。翌暁四時わが偏奇館焼亡す。火は初長垂坂中ほどより起り西北の風にあふられ忽市兵衛町二丁目表通りに延焼す。余は枕元の窓火光を受けてあかるくなり鄰人の叫ぶ声のただならぬに驚き日誌及草稿を入れたる手革包を提げて庭に出でたり。
(以下略)

関東大震災の時は書巻でしたね。

三月十日。 町会の男来り罹災のお方は焚出しがありますから仲の町の国民学校にお集り下さいと呼歩む。行きて見るに、向側なる歯科医師岩本氏及その家人のあるに逢ふ。握飯一個を食ひ茶を喫するほどに旭日輝きそめしが寒風は昨夜に劣らず今日もまた肌を切るが如し。余は一まづ代々木なる杵屋五叟の家に到り身の処置を謀らんと三河台電車停留場に至りしが、電車の運転する様子もなし。
(中略)
ああ余は着のみ着のまま家も蔵書もなき身とはなれるなり。
(以下略)

この時 齢67ということで さすがの荷風散人も弱音を吐いています。

三月十一日。
(前略)
鄰家フロイドルスペルゲル氏その家人と共に防空退避壕の中に起臥しをれり。黒パンを焼きバタをつけ余を馳走す。五叟の子灰の中より掘り出せしものを示す。手にとりて見るに、かつて谷崎君贈るところの断腸亭の印、楽焼の茶碗に先考の賞雨茅屋と題せしもの、また鷲津毅堂先生の日常手にせられし煙管なり。
(以下略)

黒パンにバターはハイカラですが 軍国主義と巧みに折り合いをつけ 鎌倉に暮らす大佛次郎さんのような余裕は感じられません。焼失した自宅から発見された物に対する思いは 東日本大震災で罹災なさった方々と変わりません。

三月廿二日。曇りて南風烈しく塵烟濛々たり。午後市兵衛町焼跡に至り町内会事務所を訪ふ。事務所は住友氏の邸内に立退きたるなり。郵便物及び町内有志者より罹災者への見舞金を受納す。一世帯に付き金一百円、東久邇宮家より別に金五円を恵まるるなり。

東日本大震災や福島第一原発とは異なり 二週間弱で見舞金が支給されたようです。ただ 荷風散人は町内有志者ではないのかとの思いも少し。

三月廿三日。晴。夜菅原君夫妻来話。蛤を恵まる。

季節のものか。コウナゴと異なり 汚染の心配はないのか。

三月廿六日。晴。風邪咳嗽甚し。木戸古田二氏来話。
四月初四。雨ふる。五叟子の門人野村といふ青年余のために土州橋病院に徃き解熱剤を求め来る。心情感謝すべし。


やはり災害弱者の高齢者。風邪を召されたようです。

五月初五。陰。午前麻布区役所に行く。その途次市兵衛町の旧宅焼跡を過るに兵卒の一隊諸処に大なる穴を掘りつつあり。士官らしく見ゆる男に問ふに、都民所有地の焼跡は軍隊にて随意に使用することになれり、委細は麻布区役所防衛課に行きて問はるべしと言ふ。軍部の横暴なる今更憤慨するのも愚の至りなればそのまま捨置くより外に道なし。われらは唯その復讐として日本の国家に対して冷淡無関心なる態度を取ることなり。

戦時体制下なので 随分と強権的です。
石原都知事や中曽根大勲位や佐々淳行さん好みの危機管理です。
(一部 代々木や叫ぶなど変換できなかった字は置き換えてあります)

ということで たまたま偶然読んでいた「汚れた7人 / リチャード・スターク」を海外推理小説に追加しました。

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汚れた7人 / リチャード・スターク
(角川書店 2011)
主人公: パーカー(犯罪者)

仲間6人とフットボールの売上金を強奪後 さる女性宅に潜伏していたパーカーですが 外出した隙に女性は殺害され お金は跡形もなし。 原状回復に楽観的だった7人組ですが あっという間に福島原発のように1号機、2号機、3号機、4号機同様 仲間に想定外の災難が。 特にレベル7や汚染水を意識した訳ではありません。 原子力安全・保安院と原子力安全委員会同様 版元が早川書房と角川書店で 情報が輻輳気味ですが。

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March 17, 2011

断腸亭日乗(上) 大正12(1923)年 九月朔

九月 朔。 忽爽雨歇みしが風なほ烈し。空折々掻曇りて細雨烟の来るが如し。日まさに午ならむとする時天地忽鳴動す。予書架の下に坐し「嚶鳴館遺草」を読みゐたりしが、架上の書帙頭上に落来るに驚き、立つて窗を開く。門外塵烟濠々殆咫尺を弁せず。児女鶏犬の声頻なり。塵烟は門外人家の瓦の雨下したるがためなり。予もまた徐に逃走の準備をなす。時に大地再び震動す。書巻を手にせしまま表の戸を排いて庭に出でたり。数分間にしてまた震動す。身体の動揺さながら船上に立つが如し。門に倚りておそるおそるわが家を顧るに、屋瓦少しく滑りしのみにて窗の扉も落ちず。やや安堵の思をなす。昼餉をなさむとて表通なる山形ホテルに至るに、食堂の壁落ちたりとて食卓を道路の上に移し二、三の外客椅子に坐したり。食後家に帰りしが震動歇まざるを以て内に入ること能はず。庭上に坐して唯戦々兢々たるのみ。物凄く曇りたる空は夕に至り次第に晴れ、半輪の月出でたり。ホテルにて夕餉をなし、愛宕山に登り市中の火を観望す。十時過江戸見阪を上り家に帰らむとするに、赤阪溜池の火は既に葵橋に及べり。河原崎長十郎一家来りて予の家に露宿す。葵橋の火は霊南阪を上り、大村伯爵家の隣地にて熄む。わが廬を去ること僅に一町ほどなり。

(一部 忽爽や鶏など変換できなかった字は置き換えてあります)
荷風散人でさえ 書巻を持ったまま表に飛び出したとのこと。
我が家でも 女中さんが一升瓶を持ったまま 裸足で庭に飛び出したという話が伝わっていますが 実際は「おばあちゃまかおじいちゃまだったのでは」と私は邪推。
一町といえば 約100メートルと正に危機一髪。

そして翌々日には

九月三日。微雨。白昼処々に放火するものありとて人心恟々たり。各戸人を出し交代して警備をなす。梨尾君来りて安否を問はる。

そして一ヶ月経過後

十月三日。快晴始めて百舌の鳴くを聞く。午後丸の内三菱銀行に赴かむとて日比谷公園を過ぐ。林間に仮小屋建ち連り、糞尿の臭気堪ふべからず。公園を出るに爆裂弾にて警視庁及近傍焼残の建物 を取壊中往来留となれリ。数寄屋橋に出で濠に沿うて鍛冶橋を渡る。至る処糞尿の臭気甚しく支那街の如し。
(中略)
帝都荒廃の光景哀れといふも愚なり。されどつらつら明治以降大正現代の帝都を見れば、いはゆる山師の玄関に異ならず。愚民を欺くいかさま物に過ぎざれば、灰燼になりしとてさして惜しむには及 ばず。近年世間一般奢侈驕慢、貪欲飽くことを知らざりし有様を顧れば、この度の災禍は実に天罰なりといふべし。何ぞ深く悲しむに及ばむや。民は既に家を失ひ国帑また空しからむとす。外観をのみ 修飾して百年の計をなさざる国家の末路は即かくの如し。自業自得天罰覿面といふべきのみ。

荷風散人も「天罰」という言葉を!
正に上から目線の酷薄・無慈悲な発言に少々憤りも。
ただ あくまで一ヶ月後に文人の立場で真情を吐露したもの。
また石原慎太郎さんが首長を勤める東京に対して使っているようです。
そして荷風散人自身も罹災者である点が 石原慎太郎さんと少しだけ違うかもしれません。

我家の場合 親類縁者・友人は関東中心なのですが それでも通いのお手伝いさんの縁者三家族が行方不明に...
無事を祈っています。

メディアは 今だに「阪神淡路大震災」と比較しているようですが 明らかに規模が違いますので それなりの覚悟が必要だと思います。

写真 明治大正60年史 毎日新聞社編(1956年)

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上野の大仏の首落つ

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上から燃える警視庁、倒壊した鶴ヶ岡八幡宮、地割れ

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右下はたずね人の貼紙でうまる西郷さんの銅像

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January 06, 2011

断腸亭日乗 昭和2(1927)年1月6日より

正月六日。
...薄暮銀座に赴かむとて箪笥町崖下の小路を過るに、一群の児童あり余の行き過るを見て背後より一斉に余が姓名を連呼す。驚いて顧るや群童また一斉に 拍手哄笑して逃走せり。その状さながら狂人あるひは乞食の来るを見て嘲罵するものと異なる所なし。そもそも近鄰の児童輩何が故に余の面貌姓名を識れるにや。これまたわが文筆浮誉の致すところにあらずして何ぞや。虚名の禍ここに至つて全く忍ぶべからざるものあり。世の雑誌新聞記者の毒筆の如きは余これを目にせざるを以てなほ忍ぶことを得べし。近鄰の児輩が面罵に至っては避けむことを欲するもその道なし。浩歎に堪えざるなし。余常に現代の児童の凶悪暴慢なる事 を憎めり。...

さすがの荷風散人も 児童は苦手のようです。
それにしても 上島竜兵君や出川哲朗君か山崎邦正君のような仕打ちに遭っていたとは吃驚仰天です。

ということで 恐るべき子供が登場する「ラスト・チャイルド / ジョン・ハート」を海外推理小説に追加しました。

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ラスト・チャイルド / ジョン・ハート
(早川書房 2010)
主人公: ジョニー・メリモン(13歳の少年)

主人公の少年の妹が誘拐され 父は失踪 母は酒浸りと絵に書いたような家庭崩壊。 そして「酒井法子」「後藤真希」「安室奈美恵」「観月ありさ」「安達祐実」並に 辛酸を嘗め 妙に大人びた少年は妹の行方を捜索。 事件現場周辺を徘徊する脱獄囚や捜査を担当する熱心な刑事。 その上 親友の父親も刑事という設定で  「片平なぎさ」や「山村紅葉」出演のTVドラマ同様 顔ぶれで大体の筋書きは予想がつくのですが それでも一気に読ませる筆力には脱帽。

何だか映像がないと寂しいので とりあえずLast Child / Aerosmithを。

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October 18, 2010

断腸亭日乗 昭和15(1940)年10月18日より

(P106)
 十月十八日。陰。午後落葉掃かむとて庭に出るに門外の木の間に何やら赤ききれの閃くを見る。女の腰巻かと見るにさにあらず。これ鄰家の墺国人ナチスの旗と日の丸の旗とをその門に立てるなり。この墺国人は第一次欧洲大戦の時には既に日本にありしが、いかなる方法を取りしにや日本に滞在し戦乱鎮定の後日本人の下女を妻となし現在の家に来り住みしなり。
(中略)
下女は房州辺漁村の者かと思はれ二目とは見られぬ醜婦なれど、忠実に能く働く女なり。
(中略)
日本人の教育を受くれば人皆野卑粗暴となることこの実例にても明なり。余が日本人の支那朝鮮に進出することを好まざるは悪しき影響を亜細亜洲の他邦人に及すことを恐るるが故なり。
(隣家の男の子が日本の学童と交わるようになってから行儀が悪くなったことを嘆いて)

今朝(10月18日)の朝日新聞/朝刊の「天声人語」で 荷風散人の「断腸亭日乗」を引用していたのに便乗。
ちょうど70年前の日記なのですが 「女の腰巻」「下女」「醜婦」「支那」などの文言は 天声人語では引用しづらいかと。

何の脈絡もありませんが 取り敢えず"プライドが高く横柄"なネロ・ウルフが登場する「毒蛇 / レックス・スタウト」などを海外推理小説に追加しました。

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フレンチ警部と紫の鎌 / F・W・クロフツ
(東京創元社 1972)
主人公: ジョジフ・フレンチ(スコットランド・ヤード警部)

映画館で切符売りをしている女性が 罠にはまり犯罪の手助けをさせられ フレンチ警部に助けを求めます。 警部が安全を確約したにもかかわらず 彼女は死亡。 捜査が進むにつれ 同様の事件が何件かあることが判明し 犯罪組織の解明に注力。 現代なら 栃木リンチ殺人事件や桶川ストーカー殺人事件のように初動捜査の不手際などと批判にさらされ 警部もマスコミ対応に追われて捜査どころではなかったかも...

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毒蛇 / レックス・スタウト
(早川書房 1978)
主人公: ネロ・ウルフ(私立探偵)

第一作とのこと。 失踪した兄の行方を探して欲しいと駆け込んできた女性。 そして何故か同じ頃の大学総長の死亡との関連に ネロ・ウルフは気付きます。 それにしても「49銘柄のビールを一本づつ賞味」という発想のどこがグルメなのだという思いも少し。 ウルフは身長180cm体重143kg(海外ミステリー事典 権田萬治監修 新潮社刊より)と 石塚英彦くんを一回り大きくした体躯。 現代人が缶ビールを口飲みしている姿や発泡酒を見たら ネロ・ウルフはどう思うのでしょう。

ウルフの体重は時期により若干の変動があるようですが 面倒なので「海外ミステリー事典」の数値を引用。

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August 30, 2010

曝盤の傍 久しく聞かざりし盤何といふことなく聞きあさるほどに

荷風散人の「Louisiana 1927」の2年前の日記の「書物」を「盤」に置き換えてみました。

摘録 断腸亭日乗(上)/ 永井荷風 (岩波書店 1987年)
大正14年(1925)年 (P85)
八月三十日。風ありてやや涼し。曝書の傍久しく見ざりし書物何といふことなく読みあさるほどに、暑き日も忽ち西に傾き、つくつく法師の鳴きしきる声せはしなく、行水つかふ頃とはなるなり。予は毎日この時刻に至り、独り茫然として薄暮の空打ながめ、近郷の家より夕餉の物煮る臭の漂ひ来り、垣越しに灯影のちらほら輝き出るを見る時、何とも知らず独無限の詩味をおぼえて止まざるなり。


曝書: 書物の虫ぼし

ということで Randy NewmanのGood Old Boysを引っ張り出してきてヴィニール・コレクションに追加しておきました。

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Good Old Boys / Randy Newman / 1973年
帯によると「これぞグレイト・アメリカン・ミュージック!!ディランと並ぶ偉大な詩人・作曲家。あふれる叙情と豊かな感性でアメリカの苦悩する現実をみごとに浮きぼりにした問題作。」とのこと。そして解説の野口久光先生が冒頭 感嘆符を2度も用いる破格の扱い。

待たれた2年ぶりのランディ・ニューマン。何というすばらしいまごころのこもったアルバムだろう!  懐かしい民謡をきくようなひとなつっこいメロディ、ナウなビートに乗せて歌うランディ自作の歌には、彼が育ったアメリカ南部への郷愁と、ゆがんだ社会への激しい怒り、血を分けた南部同胞へのひたむきな愛がこめられている!

 「セイル・アウェイ」(P-8264R)以来ほとんど2年ぶりのランディ・ニューマンの最新アルバムがついに登場した。  ランディは、たった2枚のアルバムによって既にボブ・ディランと並ぶシンガー=ソング・ライターともくされるだけの実のある作品をおくり出している稀な逸材であり、まさに20世紀アメリカの吟遊詩人ともいうべき好漢なのである。
(中略)
 アメリカ南部の特異な歴史的背景、風土、複雑な人的構成、抜き難い軋轢、そこに住む人々、特に弱い立場に追い込まれているニグロやプーア・ホワイト、そういう人たちを救おうと立ち上がって暗殺された政治家への深い関心をテーマにしたこのアルバムに、私たちはアメリカの若者のなかの良心、知性を感じ、「よきアメリカ」が死んでいないことを知ることができる。


ということで 「やはり、滅多にお目にかかれないアルバム、時々出して聞きたくなるアルバムだ。」とまるで私の感想を装いましたが これも野口久光先生の締めのお言葉をそのまま引用。 一言だけ付け加えれば この後2枚ほど聴き続けましたが 通人たちの絶賛に 一般的な日本人にすぎない私は 腰が引けてしまいました。

Hurricane Katrinaから5年経ったのですね。

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April 11, 2010

断腸亭日乗 西遊日誌抄 1906年(明治39年)

4月11日
露国文豪マキシム・ゴルキイその夫人及秘書を伴ひて紐育に上陸す。
4月15日
今朝紐育の諸新聞は斉しく露国文豪マキシム・ゴルキイがその投宿せるベルクレエム旅館の支配人より突然宿泊を拒絶せられたりとの記事を掲げたり。事の起こりはゴルキイの伴来れる婦人は宗教及法律上認可されたる正妻ならず、アンドレウナと呼ぶ女優なりしため旅館の支配人は米国社会の道徳上正妻ならざるものを宿泊せしむる事能はずとて文豪に向かひその宿替を請求したるものなりとぞ。


戯曲「どん底」のゴーリキーですね。

折も折 日本を代表する劇作家井上ひさし氏がお亡くなり。
「吉里吉里人」と「國語元年」の後は 「遅筆」と「奥さんを寝取られたDVの人」と「九条の会」といった本業以外のことしか印象にないのですが...
「ひょっこりひょうたん島」は毎日欠かさず見ていましたが 井上ひさしさんを認知する前の話ですね。
我が家の吉里吉里人は第27版。

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むしろ ジェームス三木元夫人とともに 元奥様の「好子さん」の方に関心が。
もっとも ジェームス三木元夫人の「仮面夫婦(山下典子 1992年)」と並び称される暴露本「修羅の棲む家(西舘好子 1998年)」はまだ読んでいませんが。
「噂の真相」は井上氏と思想信条など共感する部分も多いのか 舌鋒鋭くとはいかないようです。
哀悼の意を表するとともに「長生きした方が勝ち」という自明の理を あらためて噛みしめております。

噂の真相 1983年4月号
(P56)
井上ひさし「パズル」公演
突如打ち切り事件の”真相”

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「...井上夫人の三角関係、自殺未遂事件のウワサが業界内に流れたのは確かです。井上さんはクスリをやっているんじゃないかといってた編集者もいたけど、それは信じられないとしても、精神的に弱っていて、推理劇の構成すらも支離滅裂になってしまったんじゃないかな」(ある月刊誌編集者)

噂の真相 1986年8月号
コラム(P18)
井上ひさし夫妻の離婚余話
以前から浮気話は数回流布
夫婦関係の私小説化に期待

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井上サンは離婚の原因について”武士の情け,聞かないでくれ、心境は次作の芝居脚本に書いた”と多くを語らないが、好子夫人に愛人・西舘督夫(38歳・「こまつ座」監督助手)ができたのが原因。しかし、好子夫人の愛人はこれが初めてではない。出版関係者によれば、好子夫人の愛人はこれで四人目だという。
「無口で引っ込み思案の井上氏に変わって担当編集者との交渉はすべてこの好子婦人が取りしきっていた。生来、派手好きで社交的な彼女は、井上を千葉の自宅の三畳間の書斎にカンヅメにして、夜な夜な飲み歩いていました。二番目の愛人の某出版社社員との関係が夫にバレた時は、死ぬ死なないの大騒ぎになり、手首をカミソリで切った、という話もあります。
 三番目の愛人は講談社の大物編集者・S氏で、これも知る人ぞ知る関係といわれています。好子さんのあまりの熱の入れように、S氏はほうほうのテイで逃げ出したといわれています」(関係者)

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September 28, 2009

Latvian Song Festival

Woodstockや北朝鮮 創価学会を上回る一体感!! 皆それなりに楽しんでいる様子。 ラトヴィア 恐るべし!!





断腸亭日乗(下) 永井荷風著(岩波文庫)

昭和15(1940)年(P100)
 九月念八。晴。世の噂によれば日本は独逸伊太利両国と盟約を結びしといふ。愛国者は常に言へり、日本には世界無類の日本精神なるものあり外国の真似をするに及ばずと。然るに自ら辞を低くし 腰を屈して侵畧不仁の国と盟約をなす。国家の恥辱これより大なるはなし。その原因は種々なるべしといへども余は畢竟儒教の衰滅したるに因るものと思ふなり。

昭和18(1943)年(P207)
 九月廿八日。晴れ。晩に陰。来十月中には米国飛行機必来襲すべしとの風説あり。生きてゐたりとて面白くなき国なれば焼死するもよし、とは言ひながら、また生きのびて武断政府の末路を目撃する も一興ならむと、さまざま思ひわづらひいまだ去留を決すること能はざるなり。

昭和20(1945)年(P283)
 九月廿八日。
(前略)
我らは今日まで夢にだに日本の天子が米国の陣営に微行して和を請ひ罪を謝するが如き事のあり得べきを知らざりしなり。
(中略)
幕府瓦解の時には幕府の家臣に身命を犠牲にせんとする真の忠臣ありしがこれに反して、昭和の現代には軍人官吏中一人の勝海舟に比するべき智勇兼備の良臣なかりしがためなるべし。我日本の滅亡すべき兆候は大正十二年東京震災の前後より社会の各方面において顕著たりしに非ずや。

同じく政治体制の変換期を描いた「リガの犬たち / へニング・マンケル」を海外推理小説に追加しました。

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リガの犬たち / へニング・マンケル
(東京創元社 2003)
主人公:クルト・ヴァランダー(警部)

バルト海を隔てたラトヴィアからゴムボートに乗った二人の射殺体が漂着。(1991年2月13日) そしてラトヴィアからへビースモーカーの中佐が捜査に派遣されるが 帰国後殺害。 今度はラトヴィア側 からの要請でヴァランダーが独立運動真っ只中の首都リガへ向かうことに。(1991年8月21日独立)波乱万丈の展開もさることながら 成熟期を迎えた先進国スウェーデンから見た旧体制の社会主義国 という視点が実に新鮮でした。 それにしてもゴムボートを盗まれたり やっぱりちょっとだらしがない。

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