荷風散人の大晦日(断腸亭日乗より)
大正14(1925)年
日暮里病院の帰途桜川町の女を訪ふ。
淫蕩懶惰の日を送りて遂に年を越しぬ。
昭和2(1927)年
初更お歌来る。
除夜の鐘鳴りやみし時、お歌の帰るを送りて門外に出でて見るに、上弦の月は既に没し淡烟蒼茫として四鄰の樹木を籠めたり。
昭和3(1928)年
女好きなれど処女を犯したることなくまた道ならぬ恋をなしたる事なし。
昭和5(1930)年
郵船会社の株は無配当となり、東京電燈会社の如きも一株金壱円の配当なり。されど予が健康今年は例になく好き方にて夏の夜を神楽阪の妓家に飲みあかしたることもしばしばなりき。五十二歳の老年に及びて情癡なほ青年の如し。
昭和8(1933)年
余今日までいろいろの女と交際したれど、この度の如く何の関係もなき唯の知合ひの女より突然金の無心を言はれし事なし。
昭和12(1937)年
芝口の金兵衛に至りいち子と共に茶漬飯を喫す。いち子余が家に来り小憩して後麻布十番なる姉の家に行くとて待たせ置きたる円タクに乗りて去れり。
昭和15(1940)年
宿屋に泊り下女に戯れて恥をかかさるるも何のとがむる所かあらむ。人間年老れば誰しも品行はよくなるものなり。
昭和16(1941)年
寝に就かむとする時机上の時計を見るに十二時五分を過ぎたるばかりなれど除夜の鐘の鳴るをきかず。これまた戦乱のためなるか。恐るべし恐るべし。
昭和18(1943)年
今は勝敗を問はず唯一日も早く戦争の終了をまつのみなり。
かくして日本の国家は滅亡するなるべし。
昭和23(1948)年
夕餉を終りし時停電となる。昨夜春街氏の携来りし石油ランプにて辛じてこの日の事をしるす。
かくして戦後の第四年は過ぎ去りぬ。
かくして 若い頃の荷風散人に負けず劣らず女性関係の派手なミカエル・ブルムクヴィストが活躍する「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 / スティーグ・ラーソン」を海外推理小説に追加しました。
ミレニアム 3 眠れる女と狂卓の騎士 / スティーグ・ラーソン
(早川書房 2011)
主人公: ミカエル・ブルムクヴィスト(ミレニアムの発行責任者・共同経営者・記者)
リスベットはザラや金髪の巨人との死闘で重傷を負い入院。 公安警察特別分析班は過去の策謀が白日の下に曝されるのを恐れ リスベットの口封じなどを画策。 そしてミカエルは その実態の本格的調査を開始。 特別分析班の危機管理は オリンパス㈱の菊川・森・山田組や大王製紙㈱の井川家を想起させるものが。 光源氏や若き日の荷風散人のように華やかなミカエルの女性遍歴は相変わらず。 新たに女性が登場する度「ミカエルの毒牙にかかってしまうでは」などと物語の展開以上にハラハラ。 結局一名がミカエルの手中に...
お正月にゆっくり読むつもりだった「ミレニアム」三部作は読了。どうしましょう...
講談社青い鳥文庫の「源氏物語」と「平家物語」でも読みましょうか。

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